ピコ・第3回勉強会は、衣類のリサイクル工場見学でした。私たちは2003年5月10日、日光物産(株)西宮浜工場を訪れ、総務部長福本さんに工場を案内していただきました。そこで勉強したことを記してみます。
ドイツ・フランスそして北欧などでは国の基本的方針として既にシステム化された古着工場があり、中古衣料を東欧など衣類の不足している国へ輸出しています。一方日本では現在、年間200数万トンの古着の再利用率は10%(※1)ほどです。が、欧米なみの25〜30%のアップを目指しています。
さて、日本の古着の多くはマレーシア・シンガポールを中継し、アジア諸国さらにはカラチ経由でイスラム諸国へ、そして遠くは西アフリカ地域まで輸出され衣服・衣類として再利用されています。
いくつか意外な活用例を挙げてみましょう。最近、背広がサウジアラビアへ輸出される事があるそうです。暑い国なのにいったい誰が着るのでしょう?また、昭和58〜60年頃フィリピンで一時古着の輸入を許可した時に、セーターやマフラーなどがたくさん流れて行ったらしいのです。暑い国なのになぜ?と、当然疑問を持ってしまいます。福本さんの説明によればカナダへの出稼ぎ用に使ったらしいとのことでした。イスラム教圏では、プリーツスカートやレースのカーテンがベール等の衣服として利用されたり、バスマット(トイレマットでなく)が個人のお祈り用に使われているそうです。家族用には絨毯を敷いて祈っていますが、一人用にはバスマットを敷いてお祈りするらしいのです。“捨てる神あれば拾う神あり”で、ちゃっかり地球の裏では、捨てたはずの古バスマットが活用されていることを知りました。あるいは高度成長期には、南アフリカからウエス(工場用雑巾)として、高級品のネルウエスの注文が多かったといいます。それはネルでないとダメだそうで、いったい何のために使ったのだろうか。福本さんの推論ではダイヤモンドの研磨のためではないのか、ということです。
それぞれのお国柄・文化・歴史のちがいから、私たちの知らないところでそれぞれの利用の仕方があるようです。
古着は古紙と同時に集められます。集められた古着はその後、お金を払って工場へ運んでもらい仕分けされますが、その運ばれた古着のうち再利用されるのは約70%、残りの30%は異物・ゴミ・不用品として破棄されます。『気をつけて!あなたの注意で異物なし。皆が安心ホッとする』という標語が会社の食堂室に貼ってありました。毎日運ばれてくる古着選別の大変さを物語っているようです。(※2)
海外の古着ユーザーにとって、清潔であれば多少の破れやシミは問題ではなくたたまれている必要もないというアバウトさです。しかし埃は困る、埃は「他のものも汚れるから」というのがその理由です。また、綿(わた)は、輸送の際の万が一の火災を考え危険物として輸出禁止品目です。よって、フトンは綿を抜いて送らなければなりません。その結果フトンの打ち直しをする人も少なくなった現在、綿は倉庫の中で積まれたままでした。
このような条件の下工場では、回収された古着から異物を取り除きベルトコンベアに流します。そして、手作業で100種類に丁寧に分けて行きます。靴下はバラバラにならないよう2枚(両足)をくるっと丸めてあると良いようです。ネクタイは衣類をしばる紐として利用されていました。木綿は繊維の性質上、新しいものより何回か洗った木綿の下着などの方がウエスとしてよく油を吸うそうです。子供用衣類ジーンズ等々種類別に分けられた古着は次に、1種類づつ100キロの重さにしっかりプレスされ梱包されて行きます。
毎月300トン、年にして3600から4000トンが輸出されています。
毎年210万トン回収され9割が捨てられる古着、この古着の回収自体は子供会の回収などで年々増えて来ていますが、「この業界売れなかったらただのゴミ」と、福本さん。
日本は資源はありませんが、再資源大国になりました。鉄骨・紙・古着・・・日本は再資源の吹き溜まりになってしまいました。しかもこの厳しいビジネスに従事する日本人は少なく、会社の従業員もブラジルなど外国から働きに来ている人がほとんどです。
古着の種類も変わりました。これだけ古着がありながら衣類素材の多用化・複雑性がウエスなどへのリサイクルを難しくしているという悩みがあります。昭和30・40年代には、日本は外貨稼ぎにウエスを輸出していたのですが、今では逆に、パキスタンからタペストリーの切れ端を繋いだウエスが入って来ています。
経済だけでいいのか、こんな資源の使い方文化でいいのかが問われています。古着はまるで海上を漂う資源難民のように思えてきます。なんとかならないのだろうか。福本さんの会社の苦労を思うとこの春、北京で購入した灰色の
オーバーコートをゴミ袋に入れてゴミの日に出してしまったことが悔やまれます。もう一度誰かに着て欲しかった!!
(※1)回収した衣類は、次の3つの用途に使われています。
1、 ウエス(工場用雑巾)
2、 反毛(ウール製品を再び繊維に戻しフェルトとして利用する)
3、 古着(主に海外へ輸出される)
このうち古着が全体の80%を占めています。
(※2)古着は以前と違い、今は回収業者(仲買人)がいません。そのため、異物や汚れたものを取り除く人がいないのです。古着を出すときのマナーを知って下さい。
古着をリサイクルに出す際の注意 (1)出せるのは、古着、古繊維だけです。
(2)濡れた衣服、埃をかぶった衣服は出さないで下さい。カビは大敵!! (3)日本では着れないというものでも、海外では貴重な衣服になる事があります。捨てずに出してみましょう。 |
集められた古着を開けている様子。ここでゴミや異物を取り除く。
古着はベルトコンベアに流され、両側から従業員によって丁寧に分別され
る。
分けられた古着は種類ごとに圧縮され梱包される。
工場前で説明を受ける。(中央左側が総務部長福本氏)